はじめに

 医療栄養学科は平成13年(2001年)に開設されましたが、現在のところ国内で薬学部にある唯一の管理栄養士養成課程です。その中にあって薬物療法学研究室は薬学部ならではの研究室として、薬学と栄養学の橋渡しとなることを目標に教育並びに研究活動を行ってきました。

 医療の現場において、管理栄養士は病気の状態や服用している医薬品を理解した上で食事・栄養指導を実施することが求められます。また、患者さんが服用している医薬品と食事(食物、食品)がお互いに影響しあって治療効果、薬の副作用や栄養状態が変化することもあります。すなわち医療職種としての管理栄養士は栄養学の知識にとどまらず、医薬品の知識、さらに医薬品と食物(成分)との相互作用について熟知していることが必要となります。薬物療法学研究室では、これらの視点から卒業研究やゼミなどを行っています。

 研究面でも研究室開設当時から「食品(成分)あるいは栄養状態(低栄養、過栄養)と医薬品の相互作用」と「医薬品の作用を模倣できる食品の機能性の探索」をテーマとして様々な研究を行っています。実験は動物実験、培養細胞を使用した実験、各種酵素活性測定系などの試験管内実験など様々な手技を使用して行なっています。現在はメディカルハーブや機能性の期待できる植物などを中心に医薬品との相互作用や新たな機能性(神経細胞保護作用、抗腫瘍活性、脂肪細胞に対する作用、キサンチンオキシダーゼやα-グルコシダーゼなど医薬品の標的となる各種酵素阻害作用など)に関する研究を進めています。

 配属学生に対しては日頃から対話を大切にして、双方の意思の疎通をはかりつつ勉学や研究をはじめ日常生活全般においてもきめ細かな対応を心がけています。卒業研究は学生が主体的に興味の持てるテーマに取り組み、自ら下調べをして情報を整理し内容を理解した上で、実験を計画的に着実に進められるようになることを目標としています。また、セミナー、研究室旅行や懇親会など各種イベントは学生の自主性を重んじて学生自身が企画・運営することにしています。これらの活動を通じて自ら考えて何事にも積極的な行動を取れるようになることを目指しています。教員は学生自らが大学での思い出作りや将来を見据えた自己研鑽に励むことを期待します。

 

 2015年8月 須永 克佳